[
1]
名無しさん
★
||

[
9]
名無しさん
【空蝉-meaningless lines- 】/ ユリノネ
あたしのグリコー源は消耗寸前で
真ッ赤なアジサイ上の
カタツムリは殻だけになってゐる
嫌いでした火曜日
台所で紅茶がいらだってゐる午前も
早く眠ってしまえと思ってゐました
いつも部屋の隅にある邪魔な箱の中で
仔羊どもが戦場へと駆り立てられる姿を
あたしは飯を喰いながら見てゐました
独りで残るはツライであろう
果てなる物はコドクであろう
毒リンゴで戯れていたら後悔するよ
あれほど云ったのに・・・
まったく道理に弄ばれた非ヒト科
南瓜にお願いしたいよ
「種子だけ遺して」って
──────────
[
8]
名無しさん
【花野】
村上 博子 詩
祖母たちは歌った
繰り返し、繰り返し、琴にあわせて
また 一節の青竹の笛で
哀しく 美しい契りの歌をうたった
かれらの生まれ育ったふるさととの契り
陽と雨と風と秋の実のり 嵐と飢え 涙と愛の歌
のがれられないきびしい定めの歌を
今 秋の野を歩むわたしの胸に
かれらの嘆きがあふれてくる
お前は歩むがいい
お前の血の中で祖母がうたい続ける
あの秋風の子守歌のままに
祖母と共に いのちの歌をうたいながら
ふみしだく草の合間に咲き乱れる
桔梗 おみなえし やさしい撫子も
とぎすまされた秋の光に きらめく露を宿している
花は待っている 花の名を呼ぶ者を
野は夢みている 野に臥す者を
夜もすがら草かげに鳴く虫達のように
花と契りを結ぶ者は
その色で秋の衣を染め その露に袖をしぼり
野辺に冬の陽が明けそめる日まで
遠く果てしない花野を歩んで行く
歩んで行く
─────────
[
7]
名無しさん
【ポンコツ】 / 歌い女
私は“失敗”
皆は“正常”
心が欠けた私
不完全な存在
心は何処?
心臓?
脳味噌?
それとも胃?
足りない分泌物
少し足りない
それだけで不完全
要らない
知らない
こんなのない
そしてポイッ
地獄へGO!
腕のない女神
足のない人形
顔のないマネキン
心のない独裁者
あなたは知っている?
この世界の答えを
教えて
この何処までも愚かな
バカな私に
教えて
私の心は
私のこの言葉は
────────
[
6]
名無しさん
【姫路(かざぐるま)】
かざぐるま かざぐるま かぜのなかでまわそう
からからと おとたてて きぼうへのそらへとぶ
いつまでもにくんでいて ひめじのそらのとおさを
いつまでもわすれないで くちびるかんだあのひを
かざぐるま かざぐるま かぜにのせてまわそう
ぱたぱたと とおくまで はばたくようなおもい
いつまでもいまのままで おとなになどならないで
いつまでもだましていて しんじきっているわたしを
かざぐるま かざぐるま かぜにむけてまわそう
さやさやと きぎたちも こえあわせうたうから
───────
───────
原文:点字
[
5]
名無しさん
【姫路(目覚めるまえに思い出して)】
目覚めるまえに思い出して
このわたしの面影を
起きてもいない寝てもいない
そんな時にきっと
目覚めるまえに思い出して
わたしは夜会いに行く
遠い姫路の空を越えて
あなたが呼ぶならば
古里はいま 古里はいま
丈を競う草木
暦を越えて 季節を越えて
伸びる若い芽
★
目覚めるまえに思い出して
幼なじみのわたしを
心のままに風をおこす
ことができるならば
目覚めるまえに思い出して
あの時かけた呪文を
昔のように涙みせて
悔やみきれぬほどに
古里はもう 古里はもう
悲しみのない光
言葉を越えて 心を越えて
あなたに会いたい
─────────
─────────
[
4]
名無しさん
【マイ・ロード】 / 歌い女
正義の味方
悪の組織
無意味な傍観者
私はどれ?
正義なんて
実に曖昧なもの
悪なんて
みんな持っている
ただ見ているだけの
ギャラリー
どれもイヤよ
私は私のやりたいことを
成すだけ
それが正義や悪というものかもしれない
下手に関わるより
ただ見ているだけのほうが
楽なときもあるでしょう
あるいはそれを
見守るというものなのかもしれない
どれだっていいわ
私は私のやりたいようにやる
それだけのこと
────
────
[
3]
名無しさん
【永遠の美─忘れ去られた眠り姫─】
“その若さと美貌を保つため、永遠を望んだ姫は、魔女の呪いで眠り続ける。”
◆◆◆
白銀の月 漆黒の城
すべてを覆う枯茶の茨
周りを覆う白の蜘網
沈黙の影と静寂の霧
薄青の蝶が静かに舞う
優美な寝台に眠るは
美しき顔と黄金の髪の姫
古に魔女の呪いを受け
眠り続ける
眠り姫は
愛しき者の口づけで
目覚めるが……
未だ来る者はおらず
なぜなら
この地とその城
眠り姫の存在を
知る者はおらず
そう誰も知らない
忘れ去られた土地
だから実在はしても
今の時代に
眠り姫の伝説も物語もない
完全に忘れ去られたから
◆◆◆
“眠り姫を目覚めさせる者は現れない。だからこそ、永遠の美は保たれる。姫が望んだ通りに──。”
────
────
[
2]
名無しさん
【季節の狭間にいる精霊】
季節の狭間にだけ
存在する精霊がいる
人間が見ることは滅多にない
小さな存在は
季節と生命をつなぐためにいる
恵みの糸を紡ぎ 命の欠片を宿す
精霊が紡ぐ小さな施しは
確実に命を結ぶための 大切な役目
精霊の施しは
新しい季節の息吹とともに
萌芽し一斉に満ちる
けれど精霊自身が
それを見届けることはない
役目を終えた精霊は
ひとり静かに眠りにつくのだ
最期の役目として
自身の命を蕾に変化させ
意識はそっと消えていく
蕾は時期が来ると咲く
新しい精霊として
生まれ変わるのだ
そうやって
季節の狭間にいる精霊は
大切な役目を果たしている
────
────
[1]前へ|次へ[3]
||