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[8]名無しさん

【花野】
村上 博子 詩

祖母たちは歌った
繰り返し、繰り返し、琴にあわせて
また 一節の青竹の笛で 
哀しく 美しい契りの歌をうたった
かれらの生まれ育ったふるさととの契り
陽と雨と風と秋の実のり 嵐と飢え 涙と愛の歌
のがれられないきびしい定めの歌を

今 秋の野を歩むわたしの胸に 
かれらの嘆きがあふれてくる

お前は歩むがいい
お前の血の中で祖母がうたい続ける
あの秋風の子守歌のままに
祖母と共に いのちの歌をうたいながら
ふみしだく草の合間に咲き乱れる
桔梗 おみなえし やさしい撫子も 
とぎすまされた秋の光に きらめく露を宿している

花は待っている 花の名を呼ぶ者を
野は夢みている 野に臥す者を 
夜もすがら草かげに鳴く虫達のように

花と契りを結ぶ者は 
その色で秋の衣を染め その露に袖をしぼり
野辺に冬の陽が明けそめる日まで
遠く果てしない花野を歩んで行く
歩んで行く

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[7]名無しさん

【ポンコツ】 / 歌い女


私は“失敗”
皆は“正常”
心が欠けた私
不完全な存在

心は何処?
心臓?
脳味噌?
それとも胃?

足りない分泌物
少し足りない
それだけで不完全
要らない
知らない
こんなのない

そしてポイッ
地獄へGO!

腕のない女神
足のない人形
顔のないマネキン
心のない独裁者

あなたは知っている?
この世界の答えを
教えて
この何処までも愚かな
バカな私に
教えて
私の心は
私のこの言葉は

────────


[6]名無しさん


【姫路(かざぐるま)】


かざぐるま かざぐるま かぜのなかでまわそう

からからと おとたてて きぼうへのそらへとぶ

いつまでもにくんでいて ひめじのそらのとおさを

いつまでもわすれないで くちびるかんだあのひを

かざぐるま かざぐるま かぜにのせてまわそう

ぱたぱたと とおくまで はばたくようなおもい

いつまでもいまのままで おとなになどならないで

いつまでもだましていて しんじきっているわたしを

かざぐるま かざぐるま かぜにむけてまわそう

さやさやと きぎたちも こえあわせうたうから

───────
───────
原文:点字



[5]名無しさん


【姫路(目覚めるまえに思い出して)】


目覚めるまえに思い出して
このわたしの面影を

起きてもいない寝てもいない
そんな時にきっと

目覚めるまえに思い出して
わたしは夜会いに行く

遠い姫路の空を越えて
あなたが呼ぶならば

古里はいま 古里はいま
丈を競う草木

暦を越えて 季節を越えて
伸びる若い芽



目覚めるまえに思い出して
幼なじみのわたしを

心のままに風をおこす
ことができるならば

目覚めるまえに思い出して
あの時かけた呪文を

昔のように涙みせて
悔やみきれぬほどに

古里はもう 古里はもう
悲しみのない光

言葉を越えて 心を越えて

あなたに会いたい

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─────────


[4]名無しさん


【マイ・ロード】 / 歌い女

正義の味方
悪の組織
無意味な傍観者

私はどれ?

正義なんて
実に曖昧なもの
悪なんて
みんな持っている
ただ見ているだけの
ギャラリー

どれもイヤよ
私は私のやりたいことを
成すだけ
それが正義や悪というものかもしれない

下手に関わるより
ただ見ているだけのほうが
楽なときもあるでしょう
あるいはそれを
見守るというものなのかもしれない

どれだっていいわ
私は私のやりたいようにやる
それだけのこと

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[3]名無しさん

【永遠の美─忘れ去られた眠り姫─】

 “その若さと美貌を保つため、永遠を望んだ姫は、魔女の呪いで眠り続ける。”

◆◆◆

白銀の月 漆黒の城
すべてを覆う枯茶の茨
周りを覆う白の蜘網
沈黙の影と静寂の霧
薄青の蝶が静かに舞う

優美な寝台に眠るは
美しき顔と黄金の髪の姫
古に魔女の呪いを受け
眠り続ける

眠り姫は
愛しき者の口づけで
目覚めるが……
未だ来る者はおらず

なぜなら
この地とその城
眠り姫の存在を
知る者はおらず

そう誰も知らない
忘れ去られた土地

だから実在はしても
今の時代に
眠り姫の伝説も物語もない
完全に忘れ去られたから

◆◆◆

 “眠り姫を目覚めさせる者は現れない。だからこそ、永遠の美は保たれる。姫が望んだ通りに──。”

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────


[2]名無しさん


【季節の狭間にいる精霊】

季節の狭間にだけ
存在する精霊がいる

人間が見ることは滅多にない

小さな存在は
季節と生命をつなぐためにいる

恵みの糸を紡ぎ 命の欠片を宿す
精霊が紡ぐ小さな施しは
確実に命を結ぶための 大切な役目

精霊の施しは
新しい季節の息吹とともに
萌芽し一斉に満ちる

けれど精霊自身が
それを見届けることはない

役目を終えた精霊は
ひとり静かに眠りにつくのだ

最期の役目として
自身の命を蕾に変化させ
意識はそっと消えていく

蕾は時期が来ると咲く
新しい精霊として
生まれ変わるのだ

そうやって
季節の狭間にいる精霊は
大切な役目を果たしている

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