[1]名無しのメンタルさん
04/12 08:07
★続き2

自分がパチンコを10年ぶりに打ったのはそんな新しい生活が始まった直後だ。久しぶりに握るまとまった額の現金。それを見て「パチンコを打たなきゃな」と思った。

 受け取ったのは家賃補助を含めた13万円ほど。そこから事前に借りていた一時金の2万円を返却し残りは11万円。その11万円のうちの1万円をパチンコ台に滑り込ませ、数年ぶりのパチンコが始まった。

 玉が左から右に転がっていく。パチンコの還元率は6割だったか、7割だったか。そんなことを考えながら打った。台の中で「新世紀エヴァンゲリオン」のキャラクターが目まぐるしく動いている。ここで大当たりしたら嫌だな、と思った。大当たりすれば、脳に「パチンコをやれば儲かる」という報酬系が形成されてしまう。それは数万円の勝ちでは到底埋め合わせることのできない損害だ。それでも1万円くらいは溶かすべきだと思った。そのくらい使わなければパチンコを打ったことにはならないだろう。

 幸いなことに、15分ほどで1万円分の玉は尽きた。そうして自傷行為は終わった。

アパートでの生活が始まった頃から、持病の内臓疾患が本格的に再燃し始めた。激痛と出血が続き、何もできない日々が続いた。発作がない日はひたすら寝ていた。寝る以外にどうしようもなかった。もはや自分には、何の仕事も、何の目標も、何の意味もないのだ。横になり、目をつぶり、ひたすら時間が過ぎていくのを待った。毎日がその繰り返しだった。

 そのうち、薬物を覚えた。市販の咳止め薬をオーバードーズする。酩酊すると楽だった。何もない空白に耐え続ける日々に、薬物が酩酊の彩りを与えてくれた。酩酊の中ではいろいろなものに再び意味が与えられた。全て失ったと思っていたもの。無価値な自分。世界。酩酊しながら本を読み、映画を観た。久しぶりに心から楽しいと思える時間があった。

 そうして、完全に薬物にハマっていった。朝起きて、無意味な世界と無価値な自分を発見すると、すぐさまクスリを飲んだ。そうして酩酊の中を漂った。自分を責め続ける内なる声は鳴り止み、世界に再び色彩が与えられる。そうやって本を読み、映画を観て、外を散歩し、食べたいものを食べた。こうなってしまう前の世界。空白ではない世界。色が付いている世界。クスリの力に頼らなければ、もう自分はその世界にアクセスできないのだ。だからクスリを飲んだ。飲み続けるしかなかった。

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